2011年1月28日金曜日

桃栗三年、柿八年・・

とある里村がありまして
そこの里村では「柿」を採るのが
生業となっております

村には「柿守」と呼ばれる
住人が居てそれぞれが
柿の木を育て、実を採って
暮らしています

ここに一人の柿守名人のおじいと
その息子が居ます

おじいは今日もせっせと
柿の木の手入れに
勤しんでいます

そこに息子がやって来て
おじいに言いました

息子:「おじい!あの柿の実はそろそろ
採り頃なんじゃないのかい?」

おじい:「まだまだじゃのぅ」

息子:「あれもそうじゃ!早よぅ採らんと!
ほらっカラスが突っつきよる カラスあっちへ行け!!」

おじい:「ほっときなさい! カラスも必死なんじゃろうて」

息子:「じゃけどワシは腹減ったし!
おじいの柿の実の美味しそうなの一つくれや~」

おじい:「息子殿、良~く憶えておきなさい・・」

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柿の実はいつでもくれてやろうぞ
じゃが、お前が可愛いからこそ
氣付いて欲しいんじゃヨ

お前の欲しがっとる柿の実は
一体どこに成っておるかのぅ?

そう!柿の木に成っておるのぅ

「柿の実」が欲しければ一生懸命
「柿の木」の世話をすることじゃ!

一生懸命「柿の木」のために
尽くすことじゃ!

すると不思議なことに柿の木の方から
一番食べごろな柿の実をポトリと
落としてくれるのじゃヨ

そう!柿の木の方から
いつも世話になるのう、て言うて
目の前にポトリとなぁ

お世話した結「果」が「実」に
なってこそ「果実」じゃよ

そのお世話した「果」実が「成」るからこそ
「成果」なんじゃよ

お前は柿の実ばかり見て
まだ、青いの 食べ頃だの言うておるが
柿の木のことは見てなかろぅ

実ばかり見て採る事ばかり考えるのは
あのカラスや柿泥棒と何ら変わりはせんのぅ

ひもじい間はワシがお裾分けをしてやるから
今はしっかり自分の柿の木を育てなされ

良いかのぅ 息子殿
桃栗三年、柿八年じゃよ!

そして、良い柿の実は良い柿の木から
良い柿の木は良い柿の種からじゃ

ワシの柿の実と種を分けてやるから
今は自分の柿の木を一生懸命
お世話することから始めなさい

他所様の柿の実を
・・欲しがったり
・・惜しがったり
間違っても盗んだりせずに

一生懸命自分の柿の木の
お世話をしなさい

そうすれば柿の木が
お世話になったお礼に
一番食べごろの柿の実を
ポトリと落としてくれるじゃろう

ワシの柿の実を食べたところで
腹は満ちても魂までは満ちる事はないぞ

一生懸命自分の柿の木の
お世話をしなさい

そうすれば柿の木が
お世話になったお礼に
一番食べごろの柿の実を
ポトリと落としてくれるじゃろう

その実を食べればその時
全ての合点が行くじゃろう

この里村の柿守たちが
いつも明るく幸せそうなのか?

桃栗三年、柿八年・・